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07-Dec-97 登場
01-Jan-98 完結
15-Jan-98 補筆

97年クリマル記録 (その2)

--- 補筆分はここです。 ---


目次

◆ Advent第1週

   ・11月29日(土) ベルンカステル、ルクセンブルク、トリアー

   ・11月30日(日) フランクフルト

◆ Advent第2週

   ・12月 6日(土) ダイデスハイム、シュパイヤー

   ・12月 7日(日) ハーナウ

   ・12月10日(水) グルノーブル(番外編)

◆ Advent第3週

   ・12月12日(金) アルスフェルト、ハン=ミュンデン、ゲッティンゲン

   ・12月13日(土) フレンスブルク、コルディング、キール

   ・12月14日(日) キール(続)、リューベック、シュヴァルツェンベーク、
                リューネブルク、ハンブルク、ブレーメン

   ・12月15日(月) ブレーメン、ツェレ、ゴスラー

◆ Advent第4週

   ・12月20日(土) マンハイム、カールスルーエ

   ・12月21日(日) ベルン、バーゼル、フライブルク

◆ クリスマス本番

   ・12月24日(水) ミュンヒェン

◆ おまけ (15-Jan-98 追記)

   ・1月13日(火) ローマ






--- 前ページより続く ---


12月14日(日) キール(続)、リューベック、シュヴァルツェンベーク、
            リューネブルク、ハンブルク、ブレーメン

【キール】 (Kiel) --- 続き

ホテルの部屋にあった市街地図を見ていたら、昨夜のクリマル会場とはまた別の所に、アルテマルクト(Alte Markt:旧市場)なる場所があることに気が付いた。いかにもクリマルがありそうな地名である。よって、出発前に寄ってゆくことにする。

予想通り、そこにはクリマルが。昨夜の会場よりだいぶ規模は小さい。さながら、「サブ会場」といった所か。まだ午前中なので半分位の店は閉まっているし、開いていても客はまばら。グリューヴァイン屋など誰も客は居ない。一応存在を確認したので、足早に先を急ぐことにする。

【リューベック】 (Luebeck)

かつてはハンザ同盟の有力都市だった街。その名残で、立派な市庁舎や教会が立ち並ぶ。

クリマルはゴシック様式の立派な旧市庁舎前の石畳の広場にある。いわゆる「典型的」なスタイル。行ったのは昼過ぎで、日曜日ということもあってか凄い人出である。「商店閉店法」により全ての商店が閉まる日曜日、人々は他にすることがないからクリマルに来るとの説もある。

それにしても飲食店舗がやたらと多くてクリスマスグッズの店が少ないなあと思いきや、市庁舎の壁を隔てた広場の外側にもいくつか出店が出ていて、こちらはクリスマスグッズの店も多い。

脇の教会の裏手には、「Maerchen Wald」(お伽の森)と題された区画があり、著名な童話の1シーンを描いた家や人形のセットがいくつも展示されている。残念ながらこの世界に疎い僕には、「赤ずきん」や「白雪姫」くらいはそれと分かるが、他の多数のものはまったく知らない。

なおこの教会は、その昔名オルガニストとして名をはせていたブクステフーデの演奏を聞きに、バッハ青年がヴァイマールから遠路はるばる尋ねてきたとの記念碑がある。ブクステフーデもオルガン音楽の世界では巨匠とされる作曲家・演奏家の一人であるが、一般の人々の間では知名度が高いとは言い難い。この教会にしても、バッハ青年が尋ねて来なければブクステフーデの記念碑が建立されたかどうかは怪しい。

クリマルの話に戻る。グリューヴァインのカップは3種類ほど出回っている模様。最近のやり方に従い、1種類のみ入手して持ち帰る。クリッペは....見当たらず。

【シュヴァルツェンベーク】 (Schwarzenbek)

リューベックからリューネブルクへ向かう一般国道沿いの小さな街で開催中のクリマルに遭遇。迷わず車を停めて見物。このような田舎街の常として、見るからに「素人クリマル」風である。

広場の一角では、炭火を起こしたところへ、子供たちが木の枝に刺したリンゴをかざして、焼きリンゴにしている。すぐ隣では、木の枝に団子状の練り物を巻き付けたものを、これまた炭火であぶっている。まるで竹輪のようであったが、張り紙によると「パン生地」らしい。いづれも初めてみるもの。

クリマルの規模の割には乗り物メリーゴーランドがやたら大きかったり、ミニ観覧車があったり、「射的もどき」もあったりする。これらは伝統的クリマルの出し物とは言い難く、どちらかというと夏祭り・秋祭りの出し物である。シーズンオフの臨時収入を当て込んで出店しているのだろうか。

【リューネブルク】 (Lueneburg)

観光対象としては結構有名な街であるが、意外なことに初訪問。

バロック様式風のとっても奇麗な市庁舎の前の広場がクリマル会場となっている。これまた典型的な立地。近づくとなにやらブラスバンドの音が聞こえるが、よくあるような調子っぱずれのいかにも素人っぽい音ではない。見ると、なにやら制服を着た一団が脇の建物の石段状で演奏している。軍楽隊か。一区切り着いた所でアナウンスが入ったりしたところをみると、公式プログラムの一環らしい。

クリマルの中身もなかなか立派。「飲み食い屋」と「クリスマスグッズ屋」の比率も妥当な感じ。言い忘れたが、大抵のクリマルには「クリスマス」とはあまり関係なさそうな出店(例えば、毛糸の帽子や手袋の店、靴下の店、など)も少数見かけるが、この街の場合も同様。

ざっと見渡した限りでは、グリューヴァインのカップは1種類のみ流通。クリッペは....ここでも見当たらず。

【ハンブルク】 (Hamburg)

リューネブルクを出たのは18時半ころだったが、ハンブルクのような大都会のクリマルなら20時前に閉まることはなかろうとの目論見で、ここへ。

この街は短期間の旅行ながら2回ほど来たことがある。ドイツでも最大級の立派な市庁舎建物の前の広場に、これまた最大級の立派なクリマルが展開されているものと予想して(信じて疑わず)行ってみれば........がら〜ん! 何もなし。

暫く辺りをうろうろしてなんとなく明るい方へ行ってみれば、聖ペトリ教会の回りに、大都会ハンブルクにしては随分控えめなクリマルを発見。が、半分程の出店はもう閉まっている。まだ19時半だというのに。あせってグリューヴァイン屋のカップをチェックするが、どこも無地のガラスコップを使っているのみ。えーっ、大都会ハンブルクには独自のクリマルカップが無いの〜?

このあと、100mほど離れた所、カールシュタット(デパート)の隣のゲルハルト=ハウプトマン広場にもクリマルを発見。ペトリ教会脇のやつよりは大きいが、それでも170万都市ハンブルクにしては意外なほど小規模。ここの一軒のグリューヴァイン屋で「クリマルカップ風」のものを使っているのを発見。良く見ると、特に「ハンブルク」とか「ヴァイナッハツマルクト」とかの文字は無く、「ゲルハルト=ハウプトマン広場のグリューヴァインスタンド」と書かれている。一応クリマルの絵も入っているがハンブルクの風景でもなさそうだ。....にもかかわらず....1個キープ。悲しい性だね。

もしかしたらこの他にもクリマル会場が有るのかもしれないが、他にも行きたい街が多数残っているので今回はこれにて切り上げることに。翌日に備え、ブレーメンへ向かう。

【ブレーメン】 (Bremen) ---- 予告編

街に着いたのは21時半。クリマルは開いている訳がない。

ホテルに車と荷物を置いて、遅い夕食に旧市庁舎のラーツケラー(直訳すると「市庁舎の地下室」:ドイツの大中都市の市庁舎の地下は、多くの場合食堂兼飲み屋になっている)へ向かう。市庁舎前広場は結構な規模のクリマルがある。見物は明日の朝に。でも平日の朝からクリマルなんて何と思われるだろうか? 待てよ、我々どう見ても東洋人。遠方からの観光客だと思えば、平日朝にクリマル見物していても何の不思議もない。

なお市庁舎へ向かうホコ天商店街の入り口付近に「豚飼いの像」があるが、91年1月に来た時(当時は日本からの旅行)に、その上の電球飾りがやはり「豚飼いの像」の絵になっているのに気が付いた。だがあのときはクリスマスも開けた後で、夜になってもその電球は点灯しなかった。で、今日行ってみたら、全く同じデザインの電球飾りで、今日はこうこうと光り輝いていた。


12月15日(月) ブレーメン、ツェレ、ゴスラー

【ブレーメン】 (Bremen)

昨日は時間も遅かったので良く見なかったが、旧市庁舎の周囲は正面のほか左右両側も広場になっていて、いずれもクリマルが繰り広げられている。これは相当な規模である。出店の小屋はあまり規格化されておらず、てんでばらばらの小屋が雑然と建てられている。我が街フランクフルト=アム=マインのと同じタイプである。個人的には、規格化された小屋が碁盤目状に並ぶのより、この雑然タイプの方が好きだ。

僕は今日は有給休暇をとったが、世間一般では平日である。にもかかわらず、クリマル会場ではどう見ても学生や引退者には見えない人達の姿を結構見かける。それに、子供の集団も。一部はいかにも「先生の引率でクリマルへ遊びに来た」という感じの小学生低学年の一団だったりするが、日本で言う中学生位の連中も随分見かける。もう冬休みに入ったのだろうか? 手許のカレンダーによると、ブレーメン市(行政上は一つの州と同じ扱い)の学校のクリスマス休暇は12月22日からとなっているが。

さすがに月曜日の真っ昼間にグリューヴァインを飲む人はそんなに多くはないが、でも結構いる。我々もまた、カップを入手する都合もあって、一杯いただく。実はここのクリマルのグリューヴァイン屋、「ただの透明ガラスカップ」を使っている店が多くて「絵や地名入りカップ」がなかなか見つからず、ちょっとやきもきしたが(するな!)、やがて「正しいクリマルカップ」を使う店を見つけた。よくあるような「クリマル組合共同製作」のカップではなく、この業者が自前で製作したカップと見た。

クリッペは....見なかったなぁ。会場が大きかったので見落とした可能性も無くはないが。

【ツェレ】 (Celle)

小さな街だが、15〜16世紀ころに由来するキレイな木組みの家がずらっと並ぶことから、北ドイツでは有名な観光地の一つである。我々も以前一度日本からの旅行の際に短時間訪れてその町並みに感嘆したものだが、今回あらためてすごいと思った。というのも、ドイツに住んであちこち出かけるようになって、木組みの家自体はドイツ中どこにでもある全然珍しくない物であることが分かったが、同時にまたこの街ほどの規模で木組みの家が集中しているところは他に無いようだと分かってきたから。

さてクリマルは....ここでも我々は「クリマルは旧市庁舎前広場にあるはず」と決めてかかって行ってみたが、ない。ただ幸いにここの旧市街はごく狭い。人がぞろぞろ歩いていく方向に2〜3分歩いたところ、Grosser Planという名の広場がクリマル会場になっている。そんなに大きな広場ではないので、出店の数も20軒かそこらといったところか。でもどの小屋も「正しいクリマル」風の、木の地膚でできた立派な小屋である。

これらに混じって、2軒ほど、ちょっと小さ目の6角形の小屋がある。木工細工の小物を並べ、「エルツ地方のクリスマスグッズ屋」みたいな屋号と、実際エルツ地方の住所、電話番号を掲げている。ちなみに「エルツ地方」とは旧東独の南端、チェコとの国境付近の山間の地。なんでも木工細工が地場産業の一つで、クリマルで売られる木彫りのクリッペ、クルミ割り人形、その他もろもろの木で出来た飾りもののかなり(殆ど?)の部分はこのエルツ地方の産らしい。前記の2軒の出店はエルツ地方の業者の直販スタンドというわけだ。他の街でもこういうのってあったっけ? (今一つ記憶にない。)

グリューヴァインのカップは....最初に目にした店では紙コップ(ドイツでは非常に珍しい!)を使っていて、次の店では無地のガラスカップを使っていたりしたので一瞬目前が暗くなった(というのは大袈裟)が、他の店では「正しいクリマルカップ」を使っているのを見て、一安心。全部で5種類程出回っている中から、結局「木組みの家並み」の絵の書かれたカップを使う店を選び、一献。

この街では久々にクリッペも確認。ちょっと小さ目の人形であるが、完全なセットの木彫りのクリッペがクリマル会場中程の小さい小屋の中に設置展示されている。

【ゴスラー】 (Goslar)

ツェレと同じように、「美しい木組みの家が並ぶ街」として観光ガイドに紹介されている。しかしながらツェレとは結構雰囲気が違う。家並みの色合いが違うのがその理由の一つだと思う。我々にとっては、ツェレと同様に約6年ぶりの再訪である。

この街に着いたのは18時ころ。ちなみに17時にはほぼ完全に暗くなっている。またここは山間部ということもあってか、周囲の畑や牧草地はうっすら雪を被っている。(昨日までの訪問地で降ったのは雨ばかり。)

この街のクリマルはまさに教科書(そんなもの無いって!)通り、旧市庁舎前広場が会場となっている。歴史的木組み建築に囲まれた広場、夜、雪、という具合にクリマルの雰囲気を盛り立てる要素は三拍子揃っているのだが、いかんせん寒い。たかだかマイナス数℃だろうから、去年はフランクフルトでも−14℃まで冷え込んだことを思うと大したこと無いはずなのだが、11月からずっと暖かい日が続いていたので寒さがこたえる。

この寒さを少しでも和らげるべく、グリューヴァインを。とはいっても、一杯を2人で分けるだけなので(このあと運転せねばならないし)、暖かいカップで手を温めているうちこそ暖かく感じるが、「体の中から暖まる」という具合にはいかない。また、それではその後がまずい。なお、カップもまた「正しいクリマルのカップ」を使用につき、そのまま持ち帰る。2マルク(約150円)ナリの安い記念品だ。

ここのクリマルのクリッペは立派だ。等身大よりやや小さ目の、石だか鉄だかで出来た現代彫刻風の顔つきの人形が、ツリーの根元にむき出しで並べられている。木彫りの人形と違って、ちょっとやそっとじゃ持っていかれる心配がないのと、触っても平気だからだろう。

ここのクリマルに居たのは1時間足らず。明日からまた仕事なのでこの辺で帰路に就く。


【今週のまとめ】

結局、今週の3泊4日の「クリマル巡りの旅」では、訪れた街の数13に、集めたクリマルカップ11個。ずっと安ホテルに泊り、飯もたいしたものは食べなかったので出費はそこそこで済んだが、この子供じみた遊びの為に貴重な石油資源を200リットルほど燃やしてしまった。ちょっぴり反省。



--- Advent第4週 ---


12月20日(土) マンハイム、カールスルーエ

スイスにお住まいの読者の方より「ベルンには立派なクリマルがあるらしいですよ!」とのお便りをいただき、急遽この週末に向かうことに。但し例によって朝寝坊の為、初日はスイスまで辿り着けず。

【マンハイム】 (Mannheim)

バロック期のフランスの王朝のそれを倣ったような宮殿で有名な街。現在の街もそのころ形成されたのが基礎になっていると見えて、ドイツの街に良くあるような「中世風の旧市街」はこの街にはない。「近世の市街」は真円形のリング(城壁後の広い道路)で囲まれ、内部の街路も碁盤の目状である。ドイツではこういうのはむしろ珍しい部類だ。

車で通りかかった大クリマル会場は、リング沿いの公園の一角。市街の中心にも市庁舎前広場やマルクト広場があるが、時間が無かったのでそれら場所のクリマルの有無は確認できず。

市街から向かって正面に立派なクリッペがあるなあと思いきや、実はこれはクリマル組合のものではなく、「ケーテ=ヴォールファールト」(Kaethe Wohlfahrt)という、今や世界規模で商売をやっているクリスマスグッズ屋の出店の展示物であった。

食べ物屋台では、プファルツ地方の名物でありかつ我が家のお気に入りの「ザウマーゲン」がここにもある。今日の行政区画上はこの街はバーデン=ビュルテンベルク州に属するが、文化圏としてはプファルツ(ラインラント=プファルツ州)の一部ということか。

グリューヴァインカップは何種類出回っていたか、今(12月31日)となってはよく覚えていない。とにかく1個、伝統的(?)な茶色のカップを1つ、確保。

【カールスルーエ】 (Karlsruhe)

「地方分権の進んだ国、ドイツ」のイメージを持つ人にとっては、ドイツ連邦最高裁の所在地として知られる。この街もまた、市の中心部は比較的新しい街並みである。クリマルはそんな市街の中心の、ビルに囲まれた小さな広場とそこに繋がる路地で開かれる。

クリッペは、確かそこそこ立派なのがあったような....(記憶が若干怪しい。)

グリューヴァインのカップは、殆どの屋台ではプラスチックの安いやつ(預り金は1マルク)を使っていたが、中に1軒「1996 Karlsruher Christkindlmarkt」との文字と絵入りの陶器のカップを使っている店があったので、これを確保。明るいところで裏の小さい文字を良く見ると、「Made in Taiwan」と。へぇー。

この後は高速5号線を南へまっしぐら。バーゼルのちょっと手前で西へそれ、隣国フランスのミュールーズ(Mulhouse)の街外れの味気ない大手ホテルチェーンの一つに泊る。どうせ今日は時間も遅くて「泊るだけ」なので、この手のホテルが少なくて値段も高めのスイスに乗り込むより、手前のフランスの方が簡単で安上がりなため。

12月21日(日) ベルン、バーゼル、フライブルク

通り道のバーゼルは午後に回ることにして、まずは今週のメイン目的地ベルンへ。

【ベルン】 (Bern)

この街は初めての訪問。第一印象は「緑色の街」だ。特に樹々が多いからではなく、市街の建物の多くが緑色を帯びているから。これは、この近辺で取れる石がおおむね緑色をしているからに他ならない。似たような例では、街全体が赤茶色っぽいニュールンベルクなんてのもある。石を切り出すような山が少ない北ドイツでは、街並みはなんとなく煉瓦色になる。

昨年訪れたチューリッヒのクリマルが割と小規模だったのに比べると、ここのクリマルはなかなか立派。とは言ってもドイツやオーストリアの大都会のそれ程の規模ではない。ドイツに比べると、クリスマス装飾品の店の比率がちょっと少な目で、かわりにお菓子や雑貨の店が多めか。

中でも目に付くのが大小とりどりのレープクーヘン(Lebkuchen)。ドイツのフランクフルト辺りで見かけるのとちょっと違い、大きい固まりから切り売りしているやつなんかは厚みがあってカステラみたいに見える。このレープクーヘンを売る店がまた多く目立つということは、この辺でも名物なんだろう。小さな固まりのやつを買って帰ったが、ドイツのやつより柔らかくて、日本の饅頭に通じるものがある。いや、不思議。

グリューヴァインも何個所かで出しているが、皆紙コップで飲んでいる。会場を一回りして、ようやく一軒の店で「お土産用」と称して売っている「絵と地名入りクリマルカップ」を見つけ、一杯飲んでカップを持ち帰る。見渡したところでは、この「土産用カップ」で飲んでいる人も見かけなければ、空になったこのカップを持ち歩く人も見かけない。どうやらドイツ人が喜ぶ(?)ので始めたが、あまり浸透していないようだ。

クリッペらしきものは....見なかった。

この連邦議会議事堂前広場のメイン会場に加え、ミュンスター(大聖堂)前広場でも小さなクリマルをやっている。こちらは一段とチャチなテントの店が目立つ。我が家式に言えば「素人クリマル風」である。

【バーゼル】 (Basel)

独・仏・スイスの3国国境にまたがる街であるが、中心部分はスイスに属する。シェンゲン条約はおろかEUにも加盟していないスイスなので、街外れの国境ではパスコントロールもある。

この街のクリマルは昨年一度空振りした。開店時間が一般商店に合わせてあるのか、土曜日は17時、日曜日は18時でおしまい。ドイツのクリマルは都会なら20時〜21時まで開いており、田舎でも19時前に閉まることはまれだから、それに比べると随分早い。ちなみに、スイスでも普段の日曜日は商店はほとんど(全部?)休みだが、アドヴェント期間中の4回の日曜日だけは営業する。ドイツでは今の所このような日曜日の特例はない。(土曜日は閉店が2時間ほど遅くなる特例がある。)

ここのクリマルでは木でできた本格的な「クリマル小屋」の店が並び、雰囲気は「正しいドイツ語圏のクリマル」だ。店で売っている品々も、先程のベルンのものより、「ドイツ風」に近い。その反面....この街のクリマルには「クリマルカップ」が無く、みな紙コップでグリューヴァインを飲む。また、ドイツでは一際巾を効かせているソーセージなんかのグリルの店が、ここではわりと遠慮がちに端っこで営業しているのみ。ソーセージを売る店の一角にキッシュ(quiche:フランスの食べ物)も置いてあるところなぞ、なかなかマルチカルチャー都市の味が出ている。(そんな大層なもんか?)

この街の最高の風物であるファストナッハト(Fastnacht:カーニバルの別称)の道化行列の人形や絵等を売る店もあり、一瞬欲しくなったが、あまりに高価なのでやめた。

話はそれるが、この街のファストナッハトの未明(午前4時スタート)の道化行列は、イチオシのオススメである。感激することうけあい! 我が家は95年と96年、2回続けて行った。世間一般のカーニバルと一週間ずれていたりするので、見物を計画される際は日程に要注意。バーゼル市観光局のファストナッハト専用HPで調べられたし。(yahoo.chもしくはyahoo.deで、「basel」で検索すればすぐ見つかるでしょう。)

クリマルの話に戻ると....クリッペは無かったみたい。

【フライブルク】 (Freiburg:ドイツ)

この街のクリマルも昨年一度空振りしている。ドイツの大きな街にしては閉店が早く、19:30で閉まってしまうため。今回もバーゼルに長居したのでちょっと際どいところだったが、何とか19時前に着いた。

ここまで来ると、「ドイツ風正しいクリマル」が繰り広げられているのは確実なので、一安心。(何が?)会場中の一等地には大きなグリルの店が出ていて、何軒もある飲み物屋の回りにはグリューヴァインで盛り上がる人達が群れているところなぞ、まさに「正統派ドイツ風クリマル」そのものである。でも、このようなスタイルが定着したのは実は結構最近の事らしい。昔はもっとほのぼのとした、かつもう少しは宗教香を感じるようなものだったろう。

「今風クリマル」に喜ぶ異教徒カップルは、ここでもクリマルカップを漁るのであった。ちなみにここのは、陶器ではなくてガラス製の小型ジョッキ型であるが、側面には旧市庁舎とその前に広がるクリマルの絵が描かれていて、「正しいクリマルカップ」の範疇に入る。


--- クリスマス本番 ---


12月24日(水) ミュンヒェン

ドイツでは12月24日は午後からクリスマスの法定休日となる。言い換えれば、商店も24日の昼過ぎまではやっている。会社も午前中は出勤日扱いであるが、僕は有給休暇を取った。

今年のクリスマスは24日午前以外は休暇を取り損なってしまったので、2泊3日のあわただしい日程でミュンヒェンへ向かう。とは言え、主な目的は「クリスマスの教会音楽巡り」なので、24日〜26日の3日間だけでも一応目的は達せられる。

ドイツの多くの街のクリマルは、22日か23日でおしまいとなる。クリマルをやっている人達だって、片づけを終えてゆったりと家族とともにクリスマスを迎えたいということだろう。そんな中にあって、知っている範囲ではミュンヒェン、アウクスブルク、ヴィーン等の街のクリマルは24日の昼過ぎ(ヴィーンは17時!)までやっている。その内の一つであるミュンヒェンへ行くからにはクリマルが開いている内に着きたいと思い、半日休暇を取った次第。その為、いつに無く早起き・早立ちとなった。

途中「もしや」との淡い期待で、通り道に当たるヴュルツブルク(Wuerzburg)とインゴールシュタット(Ingorstadt)の街で高速道路を降りて寄り道したが、どちらの街ともクリマルは23日でおしまいであった。

【ミュンヒェン】 (Muenchen)

ミュンヒェンの街そのものについては今更僕なんかの解説は不要だろう。この街のクリマルのメイン会場は観光ガイドブックでもお馴染みのマリーエン広場(市庁舎前広場)である。年期の入った木造りの大き目のクリマル小屋は、いかにも「伝統的クリマル」を思わせる。このメイン会場の店が扱う品々もまた、「伝統的クリマル風」である。(本当の伝統的クリマルがこうであったかどうかは知る由もないので別の話。)

市庁舎の裏側(北側)もまた広場と公園になっており、その一部もまたクリマルになっていて「クリッペ市」(Krippelmarkt)と名づけられている。というのも、この区画には木彫りの家庭用クリッペの店が10軒ほどずらっと並ぶから。ミュンヒェンの南西80キロ程の所の山麓の街オーバーアマルガウ周辺がこれら木彫り人形の産地として有名で、このクリッペ市の出店もほとんどがこのオーバーアマルガウの業者の出店である。

こういうところで扱う木彫りのクリッペ(キリスト生誕シーンの人形群)は結構精緻な手工芸品であるだけに高価で、本当にここで買う人がいるのか疑問なくらいである。物の本によると、大抵の家庭では一気に一揃え買うのではなく、今年は聖家族、来年は3賢王、その次に動物たち、という具合に徐々に買い揃えてゆくとか。一種の家宝ともいえる高価なクリッペセットは日本の雛人形セットにも通じるものがあるが、雛人形もこのように少しづつ買い揃えることが出来るのかどうかは知らない。(なにぶん縁がなかったので。)

この「クリッペ市」の一角には、者を売る店としてではなく純粋な展示用の小屋が建っていて、等身大の木彫りのそれはもう立派なクリッペセットが飾られている。人だかりが多かったので後で空いてからじっくり見て写真も撮ろうと思っていたのだが....これは失敗であった。1時間程後に行ってみたら小屋は裳抜けの殻。今から思うに、あまりに高価なクリッペ故盗難等を恐れてか、クリマル閉店と同時に仕舞ってしまったらしい。

ミュンヒェンのクリマルカップ(グリューヴァインの)は、3年前のクリスマスの時にも1個入手済みではあるが、今回もまたいろいろなデザインのものが出回っていたので、ついつい衝動的に2個ほど買い求めた。ということは....グリューヴァインを2杯続けさまに飲んだということ。でも今日はここに泊りで、もう車を運転しなくてよいので安心だ。

現地に着いた12時半ころからすでに店じまい支度を始めている店もあったが、時計が13時を指す頃にはほとんどの店が営業を終え、本格的に後片づけを始めた。24日まで営業するミュンヒェンのクリマルの場合、大方の店は今日は商品のみ片づけて、小屋の片づけは翌日以降にやるところが多いが、中には今日中にすっかり引き払ってしまう店もある。

かくして今年のクリマルも終わった。翌日の昼間、街をぶらぶらしていて気づいたのだが、マリーエン広場以外にも少なくとも数箇所、小さなクリマル分会場があった。これだけの大都市だから当然と言えば当然なんだろうが、3回目になる今年まで気が付かなかった。



【総括】

97年度のクリマル巡りは、訪れた街の数(実際にクリマルがあったところの数)24、集めたクリマルカップは26個。車の走行距離は延べ4000キロくらいだろうか。正直言ってさすがにマンネリの印象は免れない。こういう超過密日程の日本人観光客的クリマル巡りはこれを最後にして、来年からはもうちょっと落ち着いたアドヴェントを過ごすことにしよう。



--- おまけ ---


1月13日(水) ローマ

クリマルの話題ではないが、クリッペの話題なのでこのコーナーに補筆したい。

昨日から仕事でローマの近郊に来ているが、今日はたまたま打ち合わせが早く終わったので、夕食がてらに市内に出かける機会があった。在欧満5年を過ぎ、仕事でローマの「近郊」へ来たのは今回で3回目だが、ローマ市内に来たことはこれまで無かった。

郊外のホテルから車でローマ市内まで来て(何と、悪名高いローマ市内を自ら運転してしまった。これもレンタカーだから気軽に出来る業なり....)、かつて一度観光に来たことがあるというドイツ人同僚の言うままに車を走らせていたら、バチカンのサン=ピエトロ寺院前を通りかかった。さすがにガイドブック等で有名な光景なので、ここがそうだということは運転しながらでも一目で分かる。

ここまでなら、わざわざここに書くような話ではないのだが....ここで僕の目は皿になった。

   「ワオ〜、巨大クリッペだ!!!」

絵葉書写真でお馴染みのあのサン=ピエトロ広場の真ん中のオベリスクの脇に、結構巨大なクリスマスツリーと並んで、何とも巨大なクリッペセットがあるではないか。

何とか車の停め場所を見つけ、まずはこの広場へ向かう。クリッペそのものも等身大の約1.5倍程で十分大きいが、その入れ物がまた何とも立派。普通は「馬小屋」程度の大きさなのだが、ここのそれはまさに「野外音楽堂の舞台」といった感じである。「赤子キリスト像は?」と飼い葉桶を覗くが、中は空っぽ。良く見ると、マリア様の膝の上に、ちょっと成長した感じの幼児キリスト像がある。クリスマスの頃は、きっともっと小さな赤子像が飼い葉桶に寝かされていたのだろう。信徒ではない僕だが、しばしこの立派なクリッペには見とれてしまった。

後で思えば、ここはカトリック総本山前広場なのでクリッペくらいはあっても当然なのかもしれないが、僕はこれまでの近隣諸国の旅行を通じて、屋外クリッペもまたクリマル同様ドイツ語圏に固有の文化かと思っていたし、時期もまた「クリの内」も明けた後だったので、とにかくこれには驚いた。

余談になるが、同行した同僚達のうち、仏人2人と英人1人はこのクリッペにさほど興味を示していなかったが、独人2人は僕と同じようにしばし感心して見入っていた。もしかしたら、「屋外クリッペはドイツ語圏に固有の文化」との僕の思い込みは、あながち間違いでは無かったのかもしれない。

感激のあまりというか、僕はおもむろに携帯電話を取り出して、妻に報告の電話を入れたのであった。


--- おわり ---


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