Last update: 22-Aug-97


駐在員のひとりごと  (〜97年8月分)

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注: このページでは、新掲載分は上の方に足して行くことにします。


過保護、その後 (22-Aug-97)

ちょっと前、ウチの会社には駐在員とその家族の諸手続と生活関係の面倒を、イヤな顔もしないでやってくれる有り難い人がいると書いた。昨日、その人が辞表を出した。表面上は「イヤな顔もしないで」と見えたが、やっぱり面白くなかったんだろうなあ。

次の人の求人を始めたようだが、そう簡単に見つかりそうにない。でも待てよ、これまでみんな彼女にやってもらっていたことって、ホントは殆ど自分でやって当然の事だったんじゃないのかな。初心に帰ろう。


「ヘンなガイジン」と日本食 (10-Aug-97)

今回の出張は、日本の本社、アメリカ支社、それと僕の所属するヨーロッパ支社の情報交換会みたいなのが主目的なのだが、ここでは仕事の話はやめて、飯の話を。初日の夜は立食形式の中華の夕食会がアレンジされていたが、2日目の夜は公式予定がなく、僕達日本人駐在員らが米人・欧人連中を大衆居酒屋へ案内した。ちょっと意外だったのが、米人連中の中には魚(とくに刺身)にほとんど手を出さない人が少なくなかったこと。(おかげで、日頃魚に飢えた日本人数名はむさぼるように食ったが。)

というのも、日頃一緒に仕事している欧人達は結構よろこんで日本食屋へ行きたがり、 日本出張ともなると「日本食」をかなり楽しみにしているふしがある。これが平均的欧人の姿とは思わないが、わざわざ日本の本社の指図を受ける職場で働いてもいいかという位だから、まあ「異文化」に少なからぬ好奇心を持っている連中が集まっているのではないかと思う。カタコトの日本語を話す男など、「ボクはヘンなガイジン!」と自称している。もちろん(?)、日本酒をこよなく愛す。

それに比べると、アメリカ支社の連中にはずっと「フツーの米人」が多いということか。 でも僕は「ヘンなガイジン」を自称する欧人連中が結構好きである。考えてみれば、ドイツ生活を結構エンジョイしている僕は、「ヘンな日本人」といわれていそうな気がする。


時差ぼけ (08-Aug-97)

僕はやっぱり時差に弱い。
仕事で、一昨昨日の朝に成田に着いた。ドイツを午後に出て11時間かけて飛ぶヒコーキの中では結局2時間程しか眠っていない。だったらその日はぐっすり眠れそうなものだが、12時に寝て、3時には目が覚めてしまった。翌日の昼間は眠くてしかたがなかったのだが、その次の夜はやはり4時間しか眠れず。昨日の昼間もとても眠かったが、こうして朝まで起きている。ばかみたい。


過保護? (31-Jul-97)

日系企業の在独駐在員は過保護だと言う人が少なくない。

僕の勤務先には20名程の「駐在員」がいる。そしてこの会社には、これら駐在員とその家族の諸手続と生活関係の面倒を見ることを仕事の一部(というより、かなりの部分)としている人がいる。住民登録や滞在許可手続き等の比較的公的な部分はもとより、銀行口座開設や車の購入時の契約などの比較的プライベートな部分、更には医者(非日本人)の予約だとか電気製品の修理の依頼のように純粋にプライベートな部分まで、イヤな顔もしないでやってくれ、まったく有り難い限りだ。

この会社の駐在員の大半は、世間一般にイメージされる「駐在員」とはちょっと違い、特に海外・語学に強いから送られてきたのではなく、純粋に腕の立つ(もしくは経験の豊富な)技術者として送られてきている。それでも気休め程度の英語訓練くらいは事前に受けてくる場合が多い(全部ではない)が、とてもとてもドイツ語までは手が出ない。そんな訳もあってか、前述のような用件まで会社が面倒見てくれる。駐在員が数名しか居ないところはどうだか知らないが、これくらいの駐在員がいる会社では、だいたい似たようなことをやっているとも聞く。

僕はここではちょっと変人で、そもそもドイツに来たいばかりに日本でも少々ドイツ語を習ったりしていたし、また「何から何まで頼りきり」に抵抗があったこともあり、始めのうちは自分でも出来る事はなるべく自分でやるように努めてはいた。

だが......最近を振り返ってみると、随分例の人に頼むことが増えてしまっている。確かに会社の論理としても、僕がつたないドイツ語でやたらと時間を費やしながら自前であれこれやるより、専門の人にテキパキとやってもらった方が効率的なことは自明だ。そもそも駐在員というのは随分金がかかる存在なので、仕事に専念させたいのは理にかなってはいる。

それでも僕は、少しは自分でやる部分を残したいと思っている。そうじゃないと「せっかくの海外生活体験、もったいない!」とも思う。.....と言いながらも、上のような言い訳ばかり並べたのは、他でもない、今日もまた家の台所の水漏れの修理屋さんへの連絡を、自分でやらずにその人に頼んでしまったことを、なんとか正当化しようとしているようだ。


 閑話休題。今日の分からいきなり文体を変えた。もっとも、旅行記のほうはもともとこの文体である。まだまだ、自分の書き物のスタイルが定まっていまいことの証か。


気まずい思い (28-Jul-97)

今週のフランクフルトは比較的いい天気で、とりわけこの土日は久々に夏を感じさせました。つい今しがた、近所のビアガーデンみたいなところで夕食をすませてきたのですが......ちょっと気まずい思いをしてしまいました。注文の間違いのトラブルです。

最初僕たちは「A」と「B」という料理を注文しようしましたが、「Aは売り切れ」とのことで、結局「C」と「B」を注文しました。しばらく経って、家内の注文した「B」が来たところまではいいのですが、その数分あと、最初に「売り切れ」と言われた「A」が届けられました。今から思うと、この瞬間に「違う!」とはっきり言わねばならなかったのでしょうね。

でも持ってきたウエイターは、あまりに堂々を置いていって、すぐ次のテーブルへ行ってしまいました。僕も咄嗟に首をかしげ、次にウエイターが通りかかったら一声かけようと思って、しばらく手をつけませんでした。でも、なかなか誰も来る気配がありません。そのうち、「実は残っていたから作ってれたのかな」とか、「自分のドイツ語の聞き違えで、実は売り切れじゃなかったのかな」という気がしてきました。

それで、「まあいいか」って感じで食べはじめたら....同じウエイターが、今度は正真正銘「C」を手に、でも誰の注文かは覚えていないらしく、「Cを注文したのはどなた?」と聞いて回っています。同じテーブルにいた中年婦人2人組が、「あれ、あんたのじゃないの?」みたいなことを言いながら、こちらを見ます。僕も「確かに僕はあれを注文しましたけどね...」と、か細い声で答えはしましたが....もう手を着けてしまっているので、結局は知らん顔をしていました。

やがて、ウエイターはあきらめて戻って行ったものの、遠くの方で同僚とこちらを見ながら何か話しているみたいです。どうやら、僕が手をつけてしまった「A」は、別の客の注文だったみたいです。考えすぎかもしれませんが、何やら「だから日本人は困るんだよなあ。自分で何を注文したかもよく分かってないんだから!」みたいなことを言われているような気がしました。料理はおいしかったのですが、なんとなく気まずく後味の悪い思いをしてしまいました。

更に追い討ちをかけるように、お勘定のとき、若干のチップを加えて「フュンフ・ウント・ジープツィッヒ(75)マルク、ビッテ!」と言って80マルクを出したのですが、ウエイターは「ゼックスマルク、ツーリュック」と言って、6マルク置いて行きました。たった1マルクの違いですが、もともと2マルク強のチップのつもりだったので、結果的には1マルク強になってしまいました。「間違えて食って迷惑かけた上に、ケチな野郎だ」と思われていそうな気がして、一段と落ち込んでしまいました。

数字については、実はちょくちょく「フュンフ」といったつもりが「フィーア」と受け取られることがあります。これは僕の発音の問題だから発音を直せばいいとして....

料理の間違いなんかは、ここドイツではどう対応するのが一番平和なのでしょうか? 平均的な日本人メンタリティーに基けば、「それ、注文とは違いますけど、もしそちらが間違えて作ってしまったのでしたら、勿体無いからそのままいただきますよ」と言いたいところなんですが、咄嗟のドイツ語ではとてもうまく言えません。それとも、そういう「主張の無い」のがそもそも嫌われるのでしょうか。


さぞかし、ドイツ語が上達されたでしょう? (27-Jul-97)

在独3年目くらいから、このように聞かれることが多くなりました。僕の答えはいつも同じで、
 「いえいえ、逆に退化しちゃいました。でも、英語はだいぶましになりましたけど。」

これは3割方は謙遜ですが、7割方は自嘲を込めた事実です。要するに、使う機会がほとんど無いからです。会社での生活に限ると皆無と言ったほうが正しい。じゃあ、普段の仕事はどんな具合に?

オフィスにいる時の言語の割合は、その時々の仕事にもよりますが、日本語半分、英語半分といったところでしょうか。なぜドイツ語じゃないのか? 理由は簡単です。
 ・仕事の相手が、必ずしもドイツ語圏の人ばかりではない。むしろそれ以外が多い。
  (ちなみに僕の直属上司は英国人。また僕の出張先は、ドイツ内より英・仏両国の方がはるかに多い。)
 ・われわれ日本人駐在員も、「最低限レベルの英語がやっと」というのが実態。
  (もともと、ドイツ語が話せることなんて期待されていない。)
 ・同僚のドイツ人達は、みんな英語が達者。実はそれが採用の条件の一つらしい。
別の言い方をすれば、僕達は「ドイツの支社」へ来たのではなく「欧州支社」へ来たのだが、それがたまたまドイツ内にあったということです。

日本に居た時は、一種の「趣味」として週1回・1回3時間の学校(東京渋谷の欧日協会)へ1年半ほど通ったのですが、こちらへ来てからほとんど何もやっていません。そもそもその手の夜間のクラスは少ないので、レベルと時間帯の合うクラスを見つけるのは至難です。それでも始めの頃は少し通いましたが、半年(2学期)経たないうちにあきらめてしまいました。やっぱり、会社の外でドイツ人の友達をつくらないとダメですね。

そんな訳で、こちらでドイツ語を使う機会といったら、外食の時、田舎を旅行する時、車を修理屋に持って行くとき、くらいのものです。ああ情けない。


フランス人は、英語が話せても意地悪して話さない? (27-Jul-97)

言葉ネタをもう一つ。

フランクフルトの飲み屋街やレストランは、ドイツの中でもひときわ英語がよく通じる所かもしれません。おそらく米軍基地があって米人が多いせいもあるでしょうし、日本人など外国からの観光客の入り口(ここで観光する対象はさほどありませんが)となっているのもその理由の一つでしょう。そうすると、これら観光客(メッセ等の短期ビジネス客も含め)馴れしたところでは、「東洋人を見たら、なんでも英語で話しかける」ドイツ人が少なからずいます。

ところが僕なんかは、せめて自分のドイツ語で用が足りるところくらいはドイツ語で通したい意地もあります。その上、僕の妻は英語よりドイツ語の方がましです。そんなわけで、僕と妻は最後までドイツ語しか話さないのに、メシ屋・飲み屋のおやじの方は、最後までヘタクソな英語(僕のドイツ語よりはましかもしれないが)しか話さない、という滑稽な事態がしばしば発生します。率直な話、僕は結構気分を害します。

僕はデュッセルドルフにも最初の半年ほど住んでいた(その後、僕が転職した訳ではないのだが、会社が引越しした)ので、その違いを随分感じます。デュッセルには観光客なんてまず来ないので、日本人を見れば「ご在住」が大半です。それで、日本人といえどもある程度は「ドイツ語が通じる」ことが期待されているようで、事実駐在員の方々もその家族の方々も、結構がんばってドイツ語でコニュニケーションしている光景を見かけました。

フランスへはたまに旅行か出張で行くだけですが、またちょっと違った雰囲気を感じます。
僕も妻もフランス語は全く話せませんが、旅行でレストランやホテルに入った時など「ボンジュール」、「ボンソワー」、「メルシー」くらいは言うようにしています。そのうち、料理の注文くらいも、なんとか言えるようになりました。メニューが全部理解できるわけではありませんが、まあ7割くらいは「だいたいどんなものが出てきそうか」わかるようになってきたので、その中から選ぶのです。

そうして、ここまでカタコトのフランス語(らしきもの)を口にすると、ウエイトレス/ウエイターは結構フランス語で話してきます。でもこちらは全然わからない。それでこちらが、首をかしげたり、「パルドン。ノン・フランセ。イングィッシュ、SVP?」なんて怪しげにいい加減な事を言っていると、今度は向こうが英語に変えてくれたりします。もちろん、英語を話さない人はドイツ以上に多い感じで、そういう時は別の人が来たりしますが、そこがフランスで、かつ高級な場所やビジネスの場でもないのだったら、それは当たり前のことであって決して悪い気はしません。

言い換えれば、こちらがフランス語でがんばろうとしている間は付き合ってくれている訳で、「日本人だから」と言って一方的に英語で話しかけてきたりはしない訳です。これがフランス人全般に言えることかどうか分かるほど経験を積んではいませんが、少なくとも僕は「ちょっといい気分」になりました。

なんちゃて、今回はフランスを持ち上げてしまいましたが、実は良い印象ばかり持っているわけではありません。むしろ反感を感じることの方が多いのです。例えば、パリのもう一つの国際空港であるオルリー空港。 もうちょっと英語の表示を真面目にやってよね!



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