じこ紹介(青春編)

泣けまっせ、お客さん。悔恨録「風はいつもアゲインストだった」でコーナー化しました。そちらもどうぞ

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じこのあらまし
じこ紹介Q&A あなたは何者?
じこ紹介1 かつてこんなことが…
じこ紹介2 最近もこんなことが…
じこ紹介3 遊びでもこんなことが…
じこ紹介(青春編) ほろ苦く、胸切なくなる…
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転職の話

1981年の冬、、、新年会を兼ねて親友の同僚、先輩と居酒屋にくりだす。いつものように、いつものごとく飲んで、食って、騒いで。ほろ酔いかげんになってきた時、突然先輩が「僕、会社辞めるから」と言った。「あっ、俺も辞める」と友も言った。「実は俺も辞めようかと思ってたんだ」と私も言った。偶然ではあるが、居合わせた三人が三人ともに次の人生を考えはじめていた。友と私は入社三年目であった。
もっとも私を除く二人はそれぞれ故郷に帰り、先輩は新しい仕事に、友は親の後を継ぐという、しっかりした生活の青写真があった。私といえば、仕事に対する意欲をなくしはじめていたこともあり、なんとなく転職を考えはじめていた。そんなところである。ただ、辞める決意はどういうわけか確固たるものがあった。
仕事がつまらないわけではなかった。人間関係がうまく行ってないというわけでもなかった。ただ、辞めるのが当然のような不思議な感じであった。
二人ともこの春には、故郷に帰ってしまうという。そんなわけで、結構飲んだ。
そしていつものように記憶がなくなった。後で「おまえが泣き上戸だとは知らなかった」と友に言われた。駅のホームでわれわれを見かけた同僚の話では「なんで帰るのだ」と泣いてすがっていたらしい。これでは、ゲイ友達に捨てられた、情けない男と誤解されても仕方ない。多分、相当の醜態だったのだろう。そんな、みっともない私を友はどう思ったのだろう。いつものように、「わけのわからんやっちゃ」と笑っていたのだろうか?
何の計画もないまま、時は過ぎたが運に恵まれ今の会社に拾われた。友が故郷に帰った後、私もすぐ転職した。送別会の二次会で気のいい先輩に今度は自分が「なんで辞めちゃうの」と泣かれてしまい、不覚にも もらい泣き をしてしまった。人間は簡単に泣けるのだとこの時知った。
「転職は中止します」の一声を必死にこらえながら、涙は勝手に流れていった。
この一年後、もう一人の親友も故郷に帰ると転職していった
もう、戻っては来ない 忘れ得ぬ冬の思い出、ではある

あたりめの話
1980年の夏、、、会社で働き出してからは、一人暮らしだったこともあり、飲んでは友の部屋に潜り込むという生活を繰り返していた。一時は週に3日、4日と泊まっていた。そんな頃

父親譲りのいびきの大きさに呆れ果てた友が、どのぐらいうるさいかを実証しようとテープレコーダーをかけてねた、その翌朝。霞んだ目をあけ,首を傾ければ、そこにはうざったい腹をむき出しにした友がいる。どうも目がうまく開かないと、鏡を見てみると何やら白い糸のようなものが顔にこびりついている。何かはわからなかったが、とにかく顔を洗いどうやら頭も回りだした。そこに起きたばかりの友が嬉しそうな顔をして「これを聞かしてやる」とばかりテープを再生しはじめた。確かに自分のいびきで目が覚めることもあるくらいなので、相当なんだろうな、と思って聞いてみる

最初は無音。テープノイズのみで静かだったのが、だんだんと、すこしづつ、いびきが大きくなってくる。「来た、来た」まるで、工事現場にゆっくりと近づいているかのごとく。ただ、聞いているうちにすこしづつ違和感を感じる。普段聞きなれている?自分のものと違うような気がして、首をひねっていると、もう一人の方がやっと工事を始める。「これだ!これが俺のだ。さっきのはYのだ」なるほど凄い。確かにひどい。見事に激しい。

平身低頭して耳を傾けているとやがて小さな声で「気持ちが悪い」との呟きが聞こえ始める。少しのみすぎたなぁ、と思ったところに「ごぼっ」と効果音が入った。なかなか、手が込んでいるテープなのだ。「うえっ」と再び効果音。しばしの沈黙、たちまち得心。謎は解けた。
「そうか、あの白い糸は夕べのつまみのあたりめのなれの果てだ」

遠い昔の、夏の日の思い出、ではある。

財布の話
1978年初春 、、、財布を落とす 最初の会社に入社直前、研修という体のいいアルバイトで3週間ほど働かされたとき、、、同じく九州からだまされてきたもう一人の同期とアルバイト最終日(つまり、来週から正式社員になる)職場の先輩諸氏とお疲れさん会に行った。それまであまり酒を飲んだことがなかったこともあり(これはほんとのことです,念のため)、加減が分からず飲みすぎ店のトイレで吐いたあと、終電過ぎの武蔵小杉の道を同期と二人肩を組んで同期のアパートへと帰った。
翌朝、いたむ頭を抱えながら起きてみると財布がない! アルバイト代と来週からの定期が入っていたのに、その当時じゃ(もちろん今でも)大金だったのに、毎日10時過ぎまでこき使われたのに、、、同期と二人で、早朝昨日の道を店まで引き返してみるも見つからない。いっしょにタチションしたどぶの中も見てみるが見当たらない。
店が開くのを待って聞いてみるも、知ったこっちゃない
交番では、けんもほろろに、聞いたこっちゃない。結局、財布は出てこなかった。10万円以上の出費となった、高い飲み会だった。今もって、一回の飲み会でこれ以上払ったことはない。
その後この同期とは、親友として付き合うことになるのだが。 かなり立ってから、「もしかしたら?」との疑念が浮かぶ。それ以来、ことあるたびに友に「もう時効だから、観念して白状したら」と自白を勧める。「友達付き合いを止めるぞ」と友、おおいに怒る。が、今もって縁は切られない、ことを考えると、、、「ほんとにおまえはヘビみたいに執念深いやつだな」の友の言葉が、耳に痛い。胸にささる。が、今もって縁を切られない、ことを考えると、、、
遠い昔の、初春の思い出、ではある。