this Extended Essay is subjected for International Baccalauretae may 2000 examination session

by yuya iketsuki

夏目漱石の初期三部作と「お金」の関係

概要

 

このエッセイでは、夏目漱石著の「三四郎」、「それから」、「門」の初期三作品に登場する「お金」に焦点をあて、「お金」が人間にもたらす影響力を、その役割とともに解明する。その際に、朝日新聞に載っていた関川夏夫氏による言葉をキーワードとした。第一章から第三章にかけて、三作品を年代順に見ていく。

「三四郎」では「お金」を貸す人、借りる人の関係が出来上がった。三四郎とミネコが「お金」の貸し借りをすることによってお互いの間に共通点が生まれ、相手に接触する動機づけになった。

「それから」は複雑な三角関係だ。代助と平岡の「お金」の有り無しの差が明白にされ、さらに「三四郎」で成立した「お金」の貸し借りの方程式によって、平岡を裏切る形で代助と三千代が結ばれた。

「門」では「お金」の有り無しが、社会的な「強者」「弱者」で区別されて、「弱者」宗助の人生は周りにあふれる「強者」に翻弄された。

以上のことから、作品に使われる「お金」に関する関係が二つ判明した。人と人を結ぶ「「お金」の貸し借り」と、人々を切り離す「弱者」「強者」だ。「お金」は人間に対してプラスとマイナスの面を持つ。

三作品では、一人の青年が社会に躍り出ながらも荒波にもまれて失速するまでがつづられている。その事と前述の関係を重ね合わせると、「小道具」「お金」が人を結び付けたり離したりと触媒として働き、作品の主題と常に連動している事実が浮かび上がった。

 

(五九七 字)

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