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脳と自己、意識。

佐倉統は「生命と人工生命の間」(丸善ライブラリー『サイエンス・パラダイムの潮流』所収)の中で次のように言っている。
・・・人間の脳は並列コンピュータのようなもので、何千万というコンピュータ、つまり数千万個の<自我>が同時に走っていると考えることができる。こんなにあると不便だから、ひとまとめにするものとして、自我、自己があるのではないか。
人工生命からわかったことは、生命はひょっとしたら物質に依存するものではないということだ。パターン、形式が生命なのではないか。そうなると、自己とか意識もおそらく生命と同じようなもので、あくまでもパターンなのではないか。

ここが問題なのだ。意識に関わりのあるものとしてこの世にあるのが、コンピュータ同様の情報処理をしている脳だけだとすれば、そこから自己意識が出てこなくてはならない。
が、どのようにして?

この一点において、ミンスキーとペンローズの喧嘩が始まる。
ペンローズに言わせれば、脳をコンピュータと捉える限り意識は出てこない。「意識は、量子力学の収縮過程と関係している」「意識は、必ず物質的な基礎を持たなければならない」

ペンローズの言うことを正しく理解することは今の私には到底無理だが、それでも、この問題の解がある方向を天才的直感によって捉えたのでは、という気がかなりする。