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昨日車のFMで、偶然ベベウ・ジルベルトを聞いた。
3日前に買ったジョアン・ジルベルトのCDに1曲、ベベウとのデュエットがはいっていて印象が強かったので、この偶然には驚いた。

ジョアンのCDは滅多に出ない。新譜は5年に1枚というところか。今回のも、1980年のライブをCDにしたものだった。
ベベウはジョアンと歌手ミウシャの娘。1か所のハーモニーを決めるために18時間ギターを弾き続けたこともあるるという夫だから、当然ながら結婚生活は続かなかったのだが、娘は父親がひきとったようだ。(どうやって育てたのだろう)

80年に14歳だったベベウの声は、まだ子供のものではあるがピアノ線のような張りがある。そして、あの調子外れ風シェガ・ヂ・サウダージ(父ジョアンがこれを歌ったのが即ちボサ・ノバの誕生である)を、確かな音程と静かなビートで歌う。
曲後半の父の声が(気のせいか)楽しそうに聞こえる。ボサ・ノバの神様(昨日のFMではそう呼んでいた。CDの解説では法王だった。)もやはり人の父、というわけだが、ジョアンが舞台に引っ張り出したのだからベベウは彼の耳にかなったに違いない。

FMでは、最近の東京公演から3曲聞かせた。なんとかいう男とのデュオ。男のギターは見事だが、そんなに大きな音で弾かなくてもいいのにとも思う。ベベウの声はすっかり大人の女のもので(32歳では当然だが)、艶と太さを備えたが、14歳の声が懐かしくもあった。

神様、法王を愛する者には少し物足りないのだが、この東京公演に行かなかったこと(あることすら知らなかった)をぼくは深く悔やむ。ジョアン・ジルベルト本人のコンサートを聞く機会はもはや一生ないだろうから、せめてその血を半分引くベベウの姿を見、声を聞きたかった。