SHAZNA




インタヴュー=則末敦子


SHAZNAの「てめぇこの野郎!!」()

97年、日本全国にイメージカラーのピンクと、蝶々もどきのIZAMヘアーを大流行させたSHAZNA。デビュー・シングル"Melty Love"のリリースからわずか半年で、CDセールス、雑誌+テレビの露出量、何をとってもトップクラスに成長したのだから大したものだ。すでに世に出たシングル("すみれSeptember Love"、"White Silent Night")もことごとくヒット・チャートを浸食したし、全国ツアーは瞬時ソールド・アウトと、その猛威はとどまるところを知らない。それにしても98年、いきなりどうよ!1月1日に先に発売したシングル"White〜"の通常版(初回は特殊ジャケットの限定版)とビデオ『Silent Beauty』のリリース、1月7日にも最新シングル"SWEET HEART MEMORY"を出したと思えば、21日にメジャー初アルバム『GOLD SUN AND SILVER MOON(←LAマスタリングの限定版』--ア〜ンド、その発売の直後31日に同作品のTOKYOマスタリングバージョンを発売するというおせち料理状態。もうスゴ過ぎ。1カ月半年分はあろうかというリリースのフルコースぶりなのである。だが、決して彼らは量産主義ではないし、音に対する真剣な姿勢は数多のアーティストと変わりない。急激なブレイクにより、「アイドル」視されがちなSHAZNAだが、真のミュージシャン魂と下世話な誤解に対する反論もあるハズだ--ってなワケでガツンと心境を吐露してもらった。今月はIZAMのほか、サウンドの要でもあるA.O.I(g)とNIY(b)にもご出席いただきましたです。



●●え〜、約1名が遅刻しておりますが(笑)。とりあえず、『音楽と人』にメンバー全員が登場するのは久々ってことで。

NIY「ああ、そうですね」

●●ちょうど1年前(←97年2月号)の本誌インタヴューで--覚えてます?「ウチら民主主義だ」「お互いの長所を伸ばすバンドだ」って言ってたんですよ。果たして現在はどうなんでしょう。

N「その感じは残ってると思います。例えばIZAMはラジオのパーソナリティをやってたりするじゃないですか。そういうのって、今の俺には絶対に出来ないし、かと言って、『何でIZAMばっか表に出るんだ』っていう風にも思わないし」

●●本人のプラスになるのであれば、積極的に何でもやった方がいいと。

N「うん。やった方がいいですよ。」

●●逆にIZAM君にない部分をNIY君が持ってたりすると思うんですけど、それはどのあたりだと思います?やっぱステージにおけるパンク的な雰囲気かな?

IZAM「そうそう。腰を90度曲げて(笑)」

N「90度も曲がってないっちゅーの!」

I「でも、あんな低いところで弾くベーシストって僕、NIY君以外いないと思いますね。しかも日に日に低くなってるもん、絶対に!」

●●そのうち地面に着くんじゃないかっていう。

I「そうそう。ベースにローラー付けて地面をはわせて(笑)。僕、思うんだけど、そのせいで普段も姿勢が悪くなってきちゃったんじゃない?」

N「うん、言われますよ。テレビに出てるのを親父とかおふくろが観て、『姿勢が悪い』とかって(苦笑)」

I「だけど、NIY君はステージに立った時、すごぉく大きくなるんです。それは、身長が伸びるとかじゃなくて、発してるオーラが大きくなるっていうか。そういうのは最近、よく感じますね」

●●この1年の間に、各メンバーの成長あり、状況も刻々変化しつつありと。早くも4thシングル"Sweet Heart Memory"が、この本の発売直後にリリースされるわけですが--。

I「あっ、しかも『音楽と人』発売の翌日(←7日)じゃないですか」

●●ここまでリリースが多いと……いったい、いつレコーディングしてたのかと。

I「ニュー・シングルは7月くらいに作ってましたね」

●●じゃあ3枚目の"White Silent Night"よりレコーディングが早かったのね。ってことは……今って、自分たちもすっごいスピードで成長してるじゃない?その辺での感覚的ズレはなかったのかな?

I「ズレは無かったんですよ。ま、"Sweet〜"の歌入れをした時は、『ああ、もっと歌えたなあ』っていうのはありましたけど……。その割には今の感じに近い頑張り具合で歌えてると思います」

●●そうかもしれないですね。だって聴いてて気にならなかったもん。

I「確かにデビューして数カ月しか経ってなくても、そういう時期って則末さんの言うように、成長の速度も速いと思うんですよ。いろんな人に会って刺激を受けるわけだし。だから、ひょっとしたら曲自体古く感じちゃうのかなあと思いきや!--SHAZNAが自分たちのバンドだからってわけじゃないけど、かなり先を行ってる気はしました。たぶん、来年の今頃聴いても、絶対に古く感じないだけの作品は作ったんじゃないかと」

●●音楽邸には、やはり脈々と80年代のニュー・ロマンティックスの血が流れてるシングルだと思うんですけども。

I「全然狙ったわけではないんですけどね。まあ、音に関してはNIY君、A.O.I君にまかせているんですが、やはり僕の内側にあるルーツがカルチャー・クラブだったり、デュラン・デュラン、a〜haだったりっていう、あの辺じゃないですか。だから無意識に--マネってことじゃなく、80's的な歌が自分には合ってるような気がしますね。あ、そうそう聞いてくださいよ。どこかの雑誌のレヴューでですね、"White〜"について書かれてたんですけども、『曲を聴いた第一印象が、昔の某アイドル歌手みたいな可愛らしい楽曲』って(怒笑)」

●●あのABBAのような曲を?

I「そりゃ、詞はちょっと甘いことを歌ってるかもしれないけど、どう考えてもあのコーラスはABBAっぽいし、ストリングスの使い方だってELOを彷彿とさせるものがあると思うんです。僕たちもそれぞれ、多少なりともいろんな音楽を聴いてきて、インスパイアされて--カッコいいなと感じたものを無意識に取り入れたりしてるじゃないですか。なのにぃ!そういう捉え方をする人もいらっしゃるというのは!僕、そのレヴューを見たとき、ショックでしたもん」

●●そのテの歪んだ解釈が出てくるのは、何となく予想はしていたものの。

I「確かにヴィジュアルはこうだし--まあ、好きでやってはいるんですけども(笑)、このヴィジュアルを出していくからには、音の方も僕ら3人は真剣に考えてるし、ポリシー持ってやってるし」

N「"White〜"って、IZAMのヴォーカルを筆頭に、甘いですよね。メロディー・ラインも詞も。それはもちろんSHAZNAの武器でもあるわけだけど、そこだけ見て疲れても(笑)」

●●しかもあのシングルの2曲目って、いきなり相当ハードな曲だったりするし。そう思ったら、ひとつのイメージでくくれないバンドだよね。毎回シングルの曲のサウンド・アプローチが変化してるから。

I「はい。違いますよね。音だけじゃなく、"Sweet〜"のジャケットでは僕、トレードマークになってるサイドのシャギー部分を上に上げちゃってますからね。もしかしたら僕かどうかわからないかもしれない(笑)。でも、違う角度から自分を見せていけるかどうかを実験したかったんですよ。結果、すごくいいものになったんで気に入ってるんですけどね」

N「あと、僕はこの4枚目のシングルってそのあとに出るアルバムにつながってると思うんです」

●●デビューから半年で、えらくシングルを出してきましたからねえ。"Sweet〜"がアルバムのガイドラインっていう解釈はすごくわかるけども、それでは、それ以前の作品っていうのはどういう意味合いでとらえてるんでしょうか。

N「アルバムに向かっていく過程のシングルっていう部分はすごくあります。でも、僕にとってはシングル1枚1枚がひとつのかたまった作品っていうか--単発だし、リリース・タームも早いですけど、何ていうかな……例えば1stの"Melty Love"とカップリングの"Raspberry Time"だったら、その2曲で完結してるっていうか」

●●つまり、アルバム1枚のテンションとシングル1枚のテンションは変わらないと。

N「そうですね。CDの再生ボタンを押したら、50〜60分聴けるものなのか、はたまた10〜12、3分のものなのかっていう違いだけであって。その中に凝縮されてるものは絶対に変わってないと思います」

●●では、続いては21日に発売をひかえるアルバム『GOLD SUN AND SILVER MOON』についてなんですけども。これ……スゴいですよね。限定版と通常版、つまりLAマスタリングとTOKYOマスタリングの2種類あって。もうファンはお年玉が吹っ飛ぶくらいな(笑)。

N「や、両方買わなきゃってことは……。もちろん買って欲しいですよ、買って聞き比べて欲しいです。だけどこういうパターンって、ひょっとしたら売り上げ枚数をのばすためみたいに捉えられがちじゃないですか。僕たちだってインディーズから出てきて、まだ日の浅いバンドだし。実際インディーズの世界って、焼き直しするみたいなことも多いんです。だけど、そういうのとは次元が違うと思うんです。ホントに『SHAZNAサイドが考えている音ってものを聴いてみたい』と思う人は、この2枚組(LAマスタリングの12cmCD*2バージョン。限定盤)を買って、いや聴いてもらえれば、すごくわかってもらえると思うし--」

(ここで遅刻のA.O.I登場)

A.O.I「すんません!申し訳ないっス」

I「(A.O.Iに)今、アルバムの話ね。で……えーと、ここでアルバムが2バージョンに分かれたワケを説明しようと思うんですが」

●●親切親切。

I「僕たちにとって、限定盤の方はアナログ的な解釈なんですよ。アナログ盤って、A面はA面、B面はB面で完結してるようなところがあるじゃないですか。そういう意味合いの作品を作りたかったんです。アルバムの曲の流れも、例えばビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』みたいな雰囲気を取り入れてみようかって言ってみたり。制作スタッフからも、いろんな引き出しを開けてもらって、その中からメンバーがセンスがいいって思ったものをチョイスしていくっていう感じだったんです。そういう意味ではマニアックな出来かもしれないけど、是非コレは薦めたいですね、僕としては」

N「うん。ただ、ぶっちゃけて言ってしまえば、僕らだけでCD作ってるわけじゃないし、いろんな理由があって通常盤っていうものにも直さねばならないと」

I「通常盤っていうのは1枚でツルッと聴けるっていうのかな?ベスト盤的な感覚で捉えてもらえば一番いいかもしれない」

●●送れてきたA.O.I君、キミのご意見としては?

A「や、もう2人の意見と全く同じで」

●●あらっ!だけど、結果自分たちの仕事は増えるわけだよね。それでも、ここはこだわりたかったみたいな。

A「今、聞いてて、だいたいIZAMの言ったことで伝わると思いますよ。あと……たぶん去年で、ある程度SHAZNAのイメージが出来上がって、たくさんの人に認知してもらえたと思うんです。今年はまず、このアルバムで僕らの新しいイメージを作り直したいっていうのはありますね」

●●いや、ホントにマニアックな部分で遊んでるんですよね。実は私も、最初にロスでチラッと聴かせてもらった時はビックリしましたから。

A「純粋に音の分かる人っていうか、サウンドの面白さをわかってくれる人達にも、リスナー層を広げていきたいし」

●●そのためにも日々の創作活動があるわけですが--ただ最近は多忙すぎて、「じっくり曲を書く時間が欲しい」っていう贅沢な悩みを抱えてるんじゃない?

A「贅沢ですけど、それが今の僕の悩みではありますん」

●●時間との戦いはどう克服してる?

I「よく『1日が48時間あったらいいのに』なんて言うじゃないですか。でも、日々充実してるんで、決して苦痛にはならないし、ある程度の曲作り期間や詩を書く時間は与えてもらってますからね。ホントは日常、フッと浮かんできたものに対して、即ガーッと集中して作れればいいんだけど、やっぱりそうもいかないわけで。それでもアーティストだったら、フッと浮かんできた瞬間のネタを温めて、その新鮮さを失わないように膨らませて、あとでバッと爆発させることが出来るんじゃないかって……いいのかな、これで」

●●いいんですよ(笑)。要するに、インパクトあることって忘れずにストックできるんだよね。

A「僕派ですね、最近時間はないけど、曲を作ろうって時になると、すっごい興奮状態になるんです。実際、曲作る時ってほとんど寝ないんですよ。別に無理して寝る時間を削ってるわけじゃないけど、寝る時間がいらなくなる。そういう体になってるときに、集中して作業するっていうか」

●●それは便利な(笑)。確かに、「ライヴ終了後は興奮状態だからなかなか寝られない」とかおっしゃるミュージシャンもいるみたいだしね。

I「僕は爆睡です」

●●ええっ?

A「僕も爆睡ですよ」

N「俺、体が痛くて寝られないんだけど」

●●はははは!さすがは腰を90度曲げてベースを弾く男!だんだん、お互いのキャラが立ってきましたね!実は先月(←1月号)の取材で、SHAZNA=「水戸黄門」説をブチあげたんですよ。

A「それは面白い発想だねえ」

●●ちょうどツアー前だったし、全国行脚して世直しするっていう。

N「愛の押し売りですね?」

I「うははは!(←超ウケ)」

A「ジジイのおせっかいっていう説もある(笑)」

●●そーなんですけど!でも、実際に苦境から立ち直ったり、マナーのいいファンも多いって話ですからね。それはやっぱ、メンバー3人がマジメなせいかな?

A「ひょっとしたら僕ら、ライヴを観に来てくれるファンの子と、精神状態はそんなに変わらないのかもしれない。もちろん、ファンにいいライヴ観せようとか、自分たちにとってもいいライヴをやりたいとか、そういう気持ちでステージに上がるけど、演奏中の精神状態は一緒のような気がする。そういう要素もあるんじゃないかなあ」

●●そのマジメさは失くさないように。では、お決まりですが、ここで98年の抱負ってやつを一言。

I「そうですねえ……まあ、この『GOLD SUN〜』っていうアルバムが出れば、きっと音楽に理解のある方には、その良さが分かってもらえると思うんですが--最初に言った、ワケわかんないレヴュー書く人達をも含めて!ガツッと世直ししたいですねっ(笑)」

●●まさに世直し!謙虚なSHAZNAも、ついに「バカヤロー」発言か?(笑)。それだけいいものを作ってやるぞと。聴け、この野郎、と。

N「洗ってやる、と(笑)」


出典:「音楽と人」1998年2月号