アリとシロアリの見分け方

アリとシロアリはぜんぜん違う昆虫です。でも、どうして同じような感じがするのでしょうね?それは、どちらも集団で生活して、夏に羽を持った女王とかオスを生産して、人間のそばによくいて、等々の理由があるのでしょう。

でも、ここではっきり説明しておきますが、アリはハチに近い昆虫で、シロアリはゴキブリに近い昆虫です!ぜんぜん違います。ついでにいうと、アリに王様アリはいないですが、シロアリには王様シロアリはいます。アリのワーカーは全部メスですが、シロアリのワーカーにはオスとメス両方います。これらは、性を決定するメカニズムが違うから引き起こされる現象なのです。シロアリは他の生物同様、メスになるか、オスになるかは性染色体の有無で決定されます。ところが、アリの場合は、全く違っていて、普通に精子と卵子が受精するとメス、受精しないで卵だけの状態で生まれるとオスになります。オスは、メスの半分しか遺伝情報を持っていないんです!これ重要。

これは、集団生活を営むための下地を考える上でも重要なところです。アリは、特殊な性決定機構のおかげで、家族間の遺伝子共有率がものすごく上がったんです。つまり、親子関係では半分の遺伝情報が共有されるのにたいして、姉妹間は、お父さんが共通の場合はなんと、親子関係よりも濃い血縁関係になるんです(遺伝子共有率は75%)!これこそが、自分では子供を産まずに、兄弟姉妹を育てるワーカーという特殊な存在をアリにおいて進化させた要因といえましょう。

それに対して、シロアリはどうなのか?実は、今のところ定説はないようです。ぼくが聞いた中で最も説得力を持っていると思われるのは、シロアリの女王と王様が近親交配して、それが代々重ねられたおかげで、集団の中の血縁関係が親子や兄弟姉妹、従兄弟やはとこなどなど、どうでもいいようなものにまでなってしまった。だから、自分で子供を産んで育てるコストよりも、他のシロアリが産んだ子供たちを育てる方がお得だと。それこそが、シロアリの社会を形成させた原因なのだ!というものです。

それ以外にも、いろんな仮説が考えられています。興味のある人は「社会性昆虫の進化生態学」海游社、松本忠夫・東正剛共編の中に納められている第7章「シロアリの新社会性の起源とその維持機構」246−297ページ、とくに247、8ページに簡潔にまとめられているので読んでみてください。

では、形態的にはどうちがうのか?これは簡単です。アリは固いです。シロアリはぷにゅぷにゅしています。アリは頭部、胸部、腹部がきちんと分かれているけれど、シロアリは頭と胴体みたいに見える(胸部が確認しにくい)。シロアリの触角はしょぼい。羽を持った女王・王様シロアリの羽は自分の体長をしのぐ大きさで、アリの場合はそこまで大きくない。こんな感じです。

アリのシロアリの違いを論じていくときりがないので、またチョコチョコと書き足していきます。



関連ホームページ

シロアリデータベース

アリの世界に戻る